人口急増!「2022年度住み続けたい町ランキング1位」朝日町の役場の方に話を聞いてみました!!

朝日町記事

三重郡朝日町。
町の総面積5.99㎢。
三重県で最も小さいこの町のことを、どれだけの人が知っているでしょうか?

三重県北、とくに朝日町と隣接する桑名や四日市に住んでいる方であれば馴染みがあるかもしれません。けれど県南では?まして、東京では?
おそらく、ほとんどの人が町の名前すら聞いたことがないというのが現実だと思います。

しかし、そんな小さな町が、「いい部屋ネット」が行っている、街の住みやすさランキング三重県版では毎年のように上位にランキングされているのです。

まずは、その無双振りの一端を見てもらいましょう。

住みやすさランキング上位常連町

以下は、「いい部屋ネット」が行った2022年度の三重県下の町ランキングにおける、朝日町の成績です。

住み続けたいランキング1位以外のランキングでも上位に位置する
  • 住み続けたい街:1位
  • 街の住みここち(自治体)ランキング:2位
  • 街に誇りがある(自治体)ランキング:2位
  • 街の幸福度(自治体)ランキング:3位
  • 愛着がある(自治体)ランキング:3位

これは、県内外で人気と知名度を誇る伊勢や、朝日町と同じく県南にあり、街の規模、人口で大きく上回る桑名や四日市を抑えた結果となっています。
朝日町は2021年度にも住みここちランキングで1位を獲得するなど、例年、上位にランキングされており、住民の町への高い支持と愛着が感じられます。

しかしここで、当然1つの疑問が浮かんできます。

何故なのか、と。

町も小さく、特に目立った観光地があるわけでもない朝日町がなぜこんなにも愛されるのか。
その理由はどこにあるのでしょう。

人口急増のきっかけは宅地開発

朝日町では2008年頃より、計画的な宅地開発を行い、それをきっかけに人口増加しています。

その増加率はすさまじく、特に2005年から2010年まで人口増加率は35%で、全国1位となっています(国勢調査の人口速報値による)。
一般的に過疎化の進む地方都市としては、異例の伸び率と言えます。

また、2020年の国勢調査でも、三重県内の市町別人口増加数・増加率で1位を取っており、宅地開発後も、コンスタントに人口が増えていることがわかります。

朝日町の人口の推移(2005年から急増し、その後も漸増している)

このことから、宅地開発を起点とした、人口増加、町の人気上昇という好循環のストーリーが見えてきます。しかし、ここでもやはり、素朴な疑問が浮かんできます。

そんなに上手くことが運ぶものだろうか、と。

宅地開発で人口が増えるなら、過疎化に苦しむ地方都市はどこも宅地開発を行えばいい、ということになります。しかし、実際は宅地開発を行っても思うように人口が増えないケースもあるでしょう。

ではなぜ朝日町は宅地開発は成功したのでしょうか。

転入者の多くが子育て世代

「朝日町人口ビジョン 朝日町まち・ひと・しごと創生総合戦略」によると、朝日町への転入者の多くが子育て世代のようです。

町が子育て世代に支持されるには、子育て支援の充実と、働く環境があることが欠かせません。

子育て支援でいえば、朝日町では下記の施策を行っています。

  • 児童手当の給付
  • 幼児教育・保育の無償化
  • ひとり親家庭等日常生活支援事業、ファミリーサポートセンターなど

仕事面でいえば、朝日駅(関西本線)と伊勢朝日駅(近鉄名古屋線)の2つの駅を有し、四日市へ電車で20分で出られるなど、ベッドタウンとしての要素を備えています。
そのことを裏付けるように、2015年の国勢調査でも、「県内他市町で従業」している住民が7割を占めていることが明らかとなっています。
朝日町自体にも伊勢朝日町駅の近くに東芝の工場があり、東芝関連の仕事に従事する住民も多くいます。
また、町を走る国道1号線沿いには商業施設が多く並びます。

このことから、朝日町は町の規模こそ小さいものの、子育て世代が安心かつ快適に暮らせる町であることがわかります。

しかし、同じように利便性があり、子育て支援を行っている市町村は他にも数多くあります。
にもかかわらず、なぜ朝日町が選ばれるのか。
宅地開発と同じように、やはりここでも疑問が残ります。

そして、その秘密は、いくらネットのページをクリックしてみてもわかりませんでした。

そこで筆者は、思い切って朝日町役場へメールでコンタクトを取ってみました。

朝日町の躍進と人気の秘密を町政に関わる方から直接知りたいと考えたからです。
また、これだけ町として高いポテンシャルを秘めた朝日町が、移住者誘致についてどう考えているかについても知りたいと思いました。

朝日町役場へメールで質問状を送ってみました

朝日町のことを調べるうちに、筆者自身も次第に朝日町に惹かれていきました。

町のランキングで上位を取ろうとも、ことさらそれを誇るわけでもなく、驕ることもなく、住民に寄り添う堅実で丁寧な町政が感じられたからです。

もしかしたら小さな町だからこそ可能な、そうした丁寧で堅実な町政運営こそ、朝日町が住民に愛される理由かもしれないと思いつつ、筆者はメールで以下の質問を朝日町の「広報・町史編さん課」へ送りました。

質問内容は、ここまでお伝えしてきた中で疑問として挙がってきた点と、移住政策、そして、この記事で初めて朝日町のことを知った人へ向け、等身大の朝日町がどんな町が知ることができるものにしました。

  1. 2005年より宅地開発により朝日町の人口は急増致しました。
    この宅地開発による人口増加が成功した理由はどこにあると思いますか?

  2. 急増後も朝日町は人口を維持しております。
    人口流出を食い止めるために、町として特に意識していること、政策などがあれば教えて下さい。

  3. 宅地開発で朝日町に転入してきた方は、三重県内や近県の方が多いのでしょうか?
    (遠方からの移住者は少ないのでしょうか?)

  4. 今後、町として遠方から(東京など)の移住者受け入れに力を入れる予定はありますか?

  5. 4で現在はその予定はないとお答え頂いた場合、その理由を簡単にお聞かせください。
    (例:町として他に優先すべきことがあるから、など)

  6. 朝日町は、例年「住み続けたいランキング」などで上位に位置しております。
    町民の方にこれほど愛される理由はどこにあると思いますか?もしくは、こういった点が町民に支持されているのではないか、といった点があれば教えてください。

  7. 朝日町とはどんな雰囲気の町ですか?
    日々過ごしていて感じることを教えて頂けると嬉しいです。

  8. ミエタイムは三重県内は勿論、県外の方も見るサイトです。
    そうした県内外の方に向け、これだけは伝えたい、という朝日町の良さなどがあれば自由にお書きください(複数でも、長くても構いません)。

朝日町から回答をいただきました

質問を送ると、関係各署や決済の関係で、2週間ほど回答に時間がもらいたいと返答がきました。そして質問を送ってから12日後、約束通り、2週間以内に朝日町役場は回答くれました。

さて、その回答はどのようなものだったか、以下にまずは原文をそのまま載せさせて頂きます(筆者の質問については前章に載せたので、簡潔にまとめたものにしています)

  • 1.宅地開発が成功した理由について(開発前段階で、人口増加を見込める証拠となる調査などを行っていたのか)
    (回答)当宅地開発事業においては区画整理組合事業であり、朝日町として検証した実績はございません。交通の利便性が高いことが人口増加の要因の一つとして推察されます。

  • 2.人口維持のための政策などについて
    (回答)定住に関して特化した施策はございませんが、令和3年3月に策定した第6次朝日町総合計画にて掲げた子育て支援・学校教育の充実や、高齢者の生きがい・健康づくり等の各種施策に取り組んでいます。

    また、本町の特性として、町内及び周辺地域に大型商業店舗や各種病院などがあることから生活の利便性が高いこと、緑と調和の取れた住環境、さらには幹線道路や鉄道駅があるため交通アクセスに優れていることなどから、人口の維持及び増加につながっていると考えられます。

  • 3.転入者は県内、県外どちらが多いかについて
    (回答)把握しておりません。

  • 4.遠方からの移住者に受け入れについての考え
    (回答)遠方からの移住者に限らず、移住に関して空家バンクを今年度中に整備予定であり、人口増の促進に努めています。

  • 5.該当せず

  • 6.町のランキング上位など、町民に愛される理由
  • 7.朝日町の雰囲気
  • 8.ミエタイムを通じて朝日町について伝えたいこと
    (6~8への回答)
    本町は三重県内で最も面積が小さいまちです。
    小さなまちですが、豊かな自然と誇れる歴史・文化を持ち、国道1号線が縦断し、伊勢湾岸自動車道みえ朝日ICがあり、鉄道では近鉄名古屋線・JR関西本線の2つの駅を有し、交通の利便性が高い町です。安全・安心して住み続けられるコミュニティづくり、持続的発展が可能なまちづくりを推進してまいります。

回答に関する補足・感想

前章で紹介した朝日町役場からの回答に筆者なりの補足や感想を述べていこうと思います。

潜在的ニーズを掘り起こした宅地開発

まず、宅地開発については土地区画整理組合の事業であったことがわかりました。
つまり、区画整理の対象となった宅地の所有者と借地権者が主体となって行った事業であり、朝日町が主導したものではないとうことです。
また、町が把握する限り、事前に人口増加に対する調査などは行われなかったようです。

このことから、回答では宅地開発で人口が増えたのは、「交通の利便性が」高いからではないかと推察をしています。

必ずしも人口増加が約束された宅地開発ではなかったにも関わらず、人口増加が起きたということは、それだけ町の利便性が高く、潜在的なニーズが高かった証でしょう。
だからこそ、宅地開発で受け皿が用意されたことで、一気に人口流入が増えたと考えられます。

また、回答では宅地開発で越してきた方達の詳細は把握していないとしていますが、筆者は近隣の市町、少なくとも三重県内から越して来た方が多い気がしています。
全国的な知名度はそれほど高くない町なので、遠くから来るより、もともと朝日町のことを知っており、その利便性に気づいていた人達が来たのではないでしょうか。

しかし、遠方からの移住に関しても「空家バンクを今年度中に整備予定」との回答がありました。

そう考えると、東京在住で、三重県への移住を考えている人にとっても朝日町は大きな選択肢の1つとなるでしょう。
住みやすさについては先に紹介したランキングでも住民自身が証明してくれています。
「暮らし」とは非日常ではなく、日常の連続です。
そこに観光地のような派手さは不要です。
心穏やかに、永続的に心地よく過ごせることが大切です。
それが朝日町にはあるように感じるのです。

お年寄りがいる家庭でも安心して暮らせる

回答では、定住に関しての特別な施策はないとしながらも、住民の満足度を高める施策として、次の4つを挙げていました。

  • 子育て支援
  • 学校教育の充実や
  • 高齢者の生きがい
  • 健康づくり等

子育て支援については、先ほど紹介した通りです。

学校教育についても、「ながら見守り」制度で住民が一体となり、かつ、無理のないやり方で子どもを見守る仕組みができているようです。

給食費や学用品など、学校で必要な費用の一部を援助する就学援助制度があり、経済的困難を抱える家庭の子供の就学をサポートも行われています(下記、リンク参照)。

http://www2.town.asahi.mie.jp/www/contents/1575590647685/index.html

また、朝日小学校円形校舎は他に例の見ない個性的で美しい形状をしており、国の登録有形文化財に指定されています。

朝日小学校円形校舎

高齢者の生きがいや健康づくりに関しても、保健福祉センターがお年寄りの憩いの場所として活用されているようです。2階にある音楽室で、デイサービスセンター利用者が楽器に親しんだり、唄を歌ったりすることもあるようです。

朝日町は、子育て世代だけでなく、お年寄りがいる家庭にも優しい町と言えそうです。

豊かな自然と誇れる歴史・文化

ここまで、朝日町の魅力について、利便性と町としての施策・制度の面から述べてきました。
しかし、回答の最後のメッセージには朝日町の魅力として「豊かな自然と誇れる歴史・文化」という言葉もありました。

住民手作りの水彩・手描き「東海道まち歩き絵図」

回答にあった朝日町の歴史・文化を語る上で外せないのは東海道の存在です。
東海道は朝日町の町を横断するように通っています。
街道沿いには徳川家にゆかりがあり、巴紋の鬼瓦がある浄泉坊など、由緒ある寺院が点在しています。

浄泉坊の鬼瓦

町としても「東海道まちなみ整備事業」として5年にわたり、東海道の整備を進めていいます。その一環として2022年には柿桜並木の整備が完了し、より一層街道の魅力が増しました。

朝日町の整備された桜並木

今後も、歩道部のカラー舗装化や、街道沿いの軒先に「竹の一輪挿し」を設置する活動などが予定されており、歴史と自然、どちらも楽しめる街道への進化を続けています。

また、朝日町の東海道散策に訪れた観光客や住民へ向け、「みえ朝日東海道 まち歩き絵図」というガイドマップも用意されています。

この絵図の特徴は何と言っても親しみやすい手描きのマップ面に、町内の史跡・施設などが
水彩画で描き添えられている点です。見ているだけでも楽しいマップに仕上がっています。

しかもこのマップの水彩画は業者やプロに頼んだのではなく、中央公民館で活動する「水彩画教室」の方々によって描かれたものだそうです。こうした点からも町政と住民との一体感を感じます。住民にとっても、自分達の日々の営みや趣味が町政に結びつくことを実感できるからこそ、町に対し愛着が湧くのでしょう。

とても素敵でほんわかする絵図なので、画像を載せておきます。
この絵図片手に、そぞろ歩きをするのはとても楽しそうです。

東海道まち歩き絵図

ガイドマップには、手描きの絵図だけでなく、先ほど紹介した浄泉坊など、東海道沿いの寺院も紹介されています(下のリンクから確認できます)。

http://www2.town.asahi.mie.jp/www/contents/1001000000450/simple/kaisetu.pdf

ナビゲーションシステム「東海道朝日を行く」

手描き絵図といったアナログなものだけでなく、「東海道朝日を行く」という、スマホで使えるナビゲーションシステムも用意されています。

このナビゲーションシステムでは、「縄生桜並木~語らいの広場」までのルート案内が可能になっています。

システムはアプリ不要でブラウザ上で稼働し、GPSに連動しているため、現地を歩くと、自動的にスライドが入れ替わり、音声ガイド付きで案内を視聴できます。

このシステムは、現地で利用されることを想定して作られていますが、家にいながら朝日町の東海道の様子をガイド付きで楽しむこともできます。
ぜひ、下記リンクから朝日町の東海道へのプチトリップを体験してみてください。

https://cocokarago.com/guide.php?id=f44d66c34fd76372f6a8

※GPS連動する場合は位置情報サービスをONにして下さい。なお、GPS連動は必須ではなく、手動でスライドを切り替えることも可能です。

宅地開発と共存する里山

宅地開発が行われ、人口が増えた朝日町ですが、緑豊かな丘陵地帯には里山が残っています。また、町境には朝明川と員弁川(町屋川)の2本の河川が流れ、東部から南部一帯にかけては、美しくのどかな田園地帯が広がります。

利便性だけでなく、心落ち着けるこうした自然が残っている点も、朝日町の魅力であり、住み続けたいと思われる理由の1つでしょう。

まとめ

今回の記事は、東京に住んでいる筆者が、もし三重に移住するなら、まず住民の満足度が高い市町はどこなのかを調べるだろうな、と考えたことがきっかけでした。
その中で、朝日町の存在を知り、調べていくうちに、この小さな町のことがどんどん好きになっていきました。

朝日町には大きな観光地などはありませんが、心穏やかに暮らせる安心と安らぎがあるように感じました。
三重への移住を考えている方はぜひ一度朝日町を訪れてみてはどうでしょう。

かくいう筆者自身も東京暮しで、三重の中では生まれ故郷である伊勢が一番好きですが、今回、伊勢の他に好きな町ができました。そのことがとても嬉しいです。いつか自分も朝日町の東海道を歩いてみたいと思います。

最後に、突然の質問にも関わらず、丁寧かつ真摯に対応して下さった朝日町役場の方々に感謝申し上げます。
回答のメール本文には「大変お待たせいたしました」という言葉が添えられていました。

筆者から依頼したことであるにも関わらず、こうした一言を添えてくださる心遣いに、朝日町という町が持つ優しさが凝集されているように感じました。

本当にありがとうございました。

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この記事を書いた人

横山 遼

横山 遼

物心ついた時から関東育ちなくせに、生まれたのが伊勢の病院というだけで、出身地を尋ねられたら頑なに「三重!伊勢!」と答えるほど三重が好き。 伊勢には母方の祖父母が住んでいたため、幼い頃は夏休みに伊勢に“帰る“のが楽しみでした。 そんなルーツを持つ自分の中には「純粋に三重が好き」という気持ちと「東京から三重がどう見えているか」という冷静な視点、その2つがあります。 こうした自分の立ち位置を踏まえ、ミエタイムでは、“東京や関東在住の人がどうしたら三重に興味を持ってくれるか”という切り口で、三重の魅力や移住情報などを発信していきたいと思っています。

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