地方企業の採用を成功に導く!採用活動でペルソナを設計する5つのメリットと設計方法
「人手不足が深刻だが、求人を出しても応募がほとんど来ない」
「せっかく応募が来ても、自社とマッチする人物ではなく結局うまくいかない」
「入社してもすぐに離職されてしまう」
地方企業では、このように採用活動に苦戦している企業が多いものです。
三重県内の企業も例外ではありません。
応募者を集め、採用活動を成功させるために必要なことはなんでしょうか?
採用活動を成功させるために有効な手段として、ペルソナを作ることが考えられます。
ペルソナとは、本来マーケティングにおいて使われるもので商品開発やサービスの開発に役立てられます。
採用活動においても、応募者を一定数確保して自社にマッチした人材を獲得するためにペルソナを設計することが有効です。
今回の記事では、ペルソナ設計の必要性やメリット、ペルソナの設計方法などについて解説します。
採用活動に苦戦する三重県内企業の採用担当者の方は、ぜひ読み進めてください!
地方企業の採用が難しい理由
地方企業が人材獲得が難しく採用活動がスムーズに進まない理由として考えられることは、大きく3つあります。
売り手市場、都市部回帰、ターゲットの不明確性が考えられます。
ここで解説します。
売り手市場
今は完全な売り手市場です。
どこの企業も学生を欲しがっている状態です。
内定者を逃さないために企業はさまざまな取り組みをしており、希望部署に配属することを約束してくれる企業もあります。
求職者は自分にとって良い提案をしてくれる企業、福利厚生が整っている企業などを選択します。
特に新卒の場合は、人気企業に応募が集中します。
都市部回帰
新型コロナウイルス感染症による影響で都市部から地方への流出が目立ちましたが、時代はアフターコロナになり、すでに都市部への回帰は始まっています。
都市部の企業に人気が集まりがちで、地方企業は魅力を発信する機会もないままに優秀な人材を都市部の企業にとられてしまうことになります。
ターゲットが不明確
自社が必要とするターゲットが不明確で「とにかく人手不足を補いたいから」と求人を出しても、上記2つの理由から難しくなります。
漠然と新入社員を募っていても、求職者側も企業の魅力が分かりづらく応募には至らないということが多いでしょう。
ペルソナを設定する必要性
地方企業が採用を成功させる上で必要なことのひとつに、ターゲットを明確にすることが挙げられます。
ターゲットとは、自社にとって必要な人材です。
ターゲットをよりくわしくパーソナリティやライフスタイルにいたるまで設定したものが、ペルソナです。
採用活動を成功させるには、ペルソナを設定することが有効です。
本項でくわしく解説します。
ペルソナとは?
ペルソナとは、本来マーケティングで使われる言葉で商品やサービスを利用する典型的なユーザー像のことを指します。
年齢・性別・価値観・ライフスタイル、趣味嗜好など、どこかに実在しそうなひとりの人をイメージして作り上げます。
作り上げたペルソナをもとにして、商品開発やサービスの向上に役立てます。
ペルソナを設定すると、その人物が望むものを具体的な企画や商品に落とし込むことできるため、マーケティングに非常に役立ちます。
採用におけるペルソナとは?
採用におけるペルソナとは、自社が採用したい人物像を作ることです。
性別・年齢・住まい・家族構成・前職の経験・保有スキル・趣味・ライフスタイル・価値観などを設定し、ひとりの人物を作り上げます。
自社が求める人物をハッキリとイメージできるまで落とし込みます。
ペルソナを設定する必要性
「求人を募っても応募が来ない」
といった課題は多くの企業が抱えるもので、地方の企業にとってはより切実な課題となっています。
加えて内定を出して入社したとしても、離職率の高さは地方に限らず企業の採用担当にとって常につきまとう課題です。
それなりの採用コストをかけて人材を獲得したにもかかわらず、双方のミスマッチのためにすぐに離職されてしまっては赤字になる一方です。
厚生労働省が令和4年10月28日に公表した平成31年3月卒業の新規学卒就職者の離職状況によると、就職3年以内の離職率は新規高卒就職者が35.9%、新規大卒就職者が31.5%でした。
事業規模別に見ると、29人以下では高卒の半数以上、大卒でも半数近くが3年以内に離職しています。
100〜499人規模の事業所が、全体の離職率と概ね同じくらいの離職率となっており、500人以上の規模の事業所では平均を下回ります。
中小企業にとって、社員の早期離職は大きな課題であることがうかがえます。
終身雇用という考え方はすっかり過去のこととなり、人材の流動化は一般的なことになっていますが、採用側としては社員の早期離職は避けたいものです。
ペルソナを設定することは、人材の早期流出を防ぐ意味で必要不可欠です。
ペルソナを設定し、採用担当者・面接官・経営陣・現場社員のすべてが共有することで、採用の課程で乖離が生まれづらくなります。
社員が一致した基準で選考を進め、自社にとって必要な人材を採用することで、入社後のミスマッチの防止につながります。
参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
ターゲットとの違い
ペルソナとターゲットの違いがあいまいになることはよくあることです。
ターゲットとは、年齢・性別・住まい・年収・職業・属性などの大きな枠組みまでを絞ったものです。
ペルソナほど細かくありません。
ターゲットに当てはまる人は、ある程度のボリュームがある円のようなイメージです。
ペルソナは、ターゲットの円の中にいるただひとりのことです。
矢で射たひとつの点のようなイメージです。
設定を絞り込んで、その人のパーソナリティまで細かく考えてひとりの人物像を作り上げます。
「学歴や経験など、自社にとって必要な人材の洗い出しはできている。ペルソナまで設定する必要は感じない」という方もいるかも知れません。
しかし、ターゲットを決めただけでは経営陣や採用担当者と、現場との間に乖離が生まれる危険性があります。
ペルソナはターゲットをより絞って自社に必要な人材の像をはっきりとしたイメージに仕上げます。
採用活動でペルソナを設定するメリット
採用活動においてペルソナを設定するメリットとして考えられることは、大きく5つあります。
ここでくわしく解説します。
採用ミスマッチの防止
採用過程におけるミスマッチは人件費をはじめとするさまざまなコストの増加につながります。入社後すぐに離職されてしまうことも不利益です。
ペルソナを設定することで、採用におけるミスマッチが減り、無駄なコストをかけずにすむようになります。
自社が求める人材を社内で共有できる
ペルソナ設定をすることで、自社が必要とする人材を社内で共有できます。
ペルソナ設定の過程で、必要な人材を言語化できるので社員すべてが共通のイメージを持てます。
社員間の認識のズレを防ぐことができます。
選考がスムーズに進む
自社が求める人材を共有することで、選考がスムーズに進みます。
一次面接・二次面接など選考を進めていく過程で、各面接の担当者が自社に必要な人材をはっきりとイメージできているので選考に残す候補者を決めることが容易になります。
最終選考においても
「現場の社員たちはA候補がいいと思っているが、経営側はB候補を推してくる」
といったことが起こりにくくなります。
内定者の選定はスムーズに進み、時間の短縮にもつながるでしょう。
自社にマッチした応募者が見込める
自社の求める人物像が明確になることで、マッチした人材の確保につながります。
求人を掲載する媒体を選ぶ際も、ペルソナが閲覧するであろう媒体を選べばいいので迷う時間が削減できます。
求職者が応募してくる時点で、ある程度自社に合った人材が見込めます。
書類選考にかける時間の削減にもつながるでしょう。
求職者が応募の決め手を見いだせる
ペルソナが設定できていることで求人内容に反映できます。
応募者にとっては「この企業は自分にあっていそうだ」ということが分かりやすいものになります。
応募の時点で企業の求める人材像がはっきり分かるので、応募の決め手になります。
ペルソナを設計するための準備
ペルソナは限られた社員だけでなくできるだけ多くの社員が意見を出し合って作り上げていくものです。
事前準備として必要なことがいくつかあります。
ここでくわしく解説します。
ペルソナの必要性の周知
まずは、全社にペルソナの必要性を周知することです。
ペルソナは採用担当だけで作り上げるものではありません。
経営陣や現場の社員が必要とする人材から作り上げていくものです。
採用にかかわるすべての社員と現場の社員が求める人物像を作り出す必要があります。
そのためには、まずペルソナの必要性を周知することが必要になってきます。
経営層や現場社員へのヒアリング
「どの部署にどのような人材が何人くらい必要か」
「必要な人材のスキルはどの程度のものを求めるか」
「パーソナリティとしては周りに溶け込めるような人を求めるのか、忌憚ない意見を言える人を求めるのか」
経営陣や現場社員が求める人材についてヒアリングします。
できるだけ細かく聞き出すことで、ペルソナの設計がスムーズになります。
ペルソナを設計する流れ
ペルソナを設計するための準備ができたら、いよいよ設計をしていきます。
ここでは、ペルソナ設計の流れについて解説します。
必要な人材の洗い出し
経営層や現場からのヒアリングを基に、自社が必要とする人材を洗い出します。
スキル・経歴・人柄・価値観などに分類していきましょう。
採用目的の明確化
採用活動を行う目的を明確にします。
「現在いる社員の離職に伴い、人材が不足するので同じポジションにつく人を必要としている」
「今後、企業として発展していく上で若い人材が必要。ポテンシャルが高い若い人材に入社してほしい」
「新規事業を展開していく上で、スキルと実績を十分に持ったリーダー候補がほしい」
上記のように、採用目的を明確にして言語化しましょう。
「ひとりくらい補充したほうがいいだろう」
といった曖昧なイメージづけは、採用活動の失敗につながります。
採用したい部署やポジションごとにペルソナを設計するので、それぞれの採用目的を明確にしていきましょう。
イメージする人物像を作る
採用目的に合う人物は、どのようなイメージでしょうか?
「スキルがある人」
「リーダーとして新部署をまとめ上げる力のある人」
「スポンジのようになんでも吸収できる人」
求める人材のイメージができたら、その人物の趣味やパーソナリティについて考えましょう。
「難しい」と思う場合は、社内にいる同じようなポジションの社員の趣味などと近いものにしていくと作りやすいでしょう。
今、自社で活躍している社員は自社の風土や気質に合うパーソナリティを持っている人物と言えます。
同じようなパーソナリティの人を採用すれば、社内に馴染みやすく定着する可能性が高くなります。
すり合わせ
イメージがつかめて、ある程度のペルソナができあがったら、経営陣・採用担当者・現場社員でイメージのすり合わせを行いましょう。
すり合わせの中でペルソナがより細かく設計され、求める人材のはっきりとした姿が見えてきます。
ペルソナの優先順位をつける
実際の採用課程では、作り上げたペルソナにすべて合致する人を選ぶわけではありません。
例えば「趣味はネットフリックスで韓ドラを見ること」と設定したとして、採用したい人材の趣味がそうでないからといって採用しないわけではありません。
ペルソナには優先順位をつけましょう。
「もっとも大切なことは、必要な資格を保有していること。できれば3年以上の実務経験がほしい」
必須条件と歓迎条件、あてはまらなくても問題ない条件といった具合にカテゴリー分けするとよいでしょう。
求人広告に掲載する内容についても、優先順位をもとに構成すれば容易に作り上げられます。
実行
ペルソナを設計することで、ペルソナが閲覧しそうな求人媒体が分かってきます。
該当する求人媒体に広告を出せば応募が見込める可能性が高まります。
例えば、現在都市部で働いている人材をペルソナとして設定しているのであれば、県内の求人媒体ではなく全国規模で行っている求人媒体やUターンIターン向けの求人媒体に求人を出すなどといったことが考えられます。
振り返り
ペルソナ設計を基に採用活動を実行してどの程度の効果があったか、自社の求める人材が何人くらい応募してきたかといったことを振り返りましょう。
求める人材と乖離が見られた場合は、ペルソナの精査が必要です。
ペルソナを作るときのポイント
ペルソナを設計するときに、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
ここでくわしく解説します。
年齢・学歴などプロフィール情報を入れる
ペルソナとは、どこかに実際に存在するひとりの人物です。
ターゲットとは違い、曖昧な部分を含みません。
性別・年齢・家族構成・学歴・住んでいる場所(市区町村)などを設定しましょう。
仕事に関する経験・スキル
経験した業界・ポジション・会社の規模・社会人年数などを具体的に設定しましょう。
パーソナリティ
パーソナリティの設定は、ペルソナ設計の上でもっとも悩むところかもしれません。
マインドや価値観、性格など「こんな人柄の人に入社してほしい!」と思うものを言語化します。
「難しい、しぼれない!」という場合は、すでに自社で働いている社員を見てみましょう。
現在社内で活躍している社員のパーソナリティをペルソナに設定すれば、求める人材に巡り会える確率が高くなります。
ペルソナをひとつに絞らない
採用したい人材がひとりなら、ペルソナはひとつで問題ありません。
しかし、企業規模によっては部署ごとに採用を必要としており「一括で採用活動したい」といった場合もあるでしょう。
その場合は、部署ごとにペルソナを設計する必要があります。
パーソナリティが自社に合う人物であっても、採用したい部署に必要なスキルや特性を持ち合わせていない場合は採用してもミスマッチになります。
ペルソナの活かし方
ペルソナを設計しても、うまく採用活動に活かせなければ費やした時間が無駄になります。
ここでは、ペルソナの活かし方について解説します。
求人票に活かす
ペルソナを設計したら、まず求人広告に活かしましょう。
ペルソナが見そうな求人媒体はどれかを考え、想定される媒体に掲載します。
求人内容には、求める人材について細かく記載します。
ペルソナを設計しているからこそ、曖昧な部分のない具体的な内容の詰まった求人になります。
他社の求人との差別化も図れるでしょう。
この時点で求める人材を明確に示すことができるので、自社にマッチしない人からの応募がなくなり、書類選考にかかる時間を削減できます。
ペルソナ側に立った求人内容にする
求人内容を作るときには、ペルソナにとって魅力的に映る企業とはどんな企業か考えましょう。
「ペルソナの持つ価値観は『ワークライフバランスの充実』だから、ノー残業デーがあること、有給休暇の取得率が高いことをアピールしよう」
「ペルソナはスキルアップできる企業を望んでいるから、資格取得にかかる費用を援助することを大きく記載しよう」
ペルソナが魅力だと思うことを求人でアピールします。
求人内容を磨きブラッシュアップしていくことで、求める人材の応募が見込めます。
社内で共有する
ペルソナは、自社が求める人物です。
ペルソナを全社員に共有することで、既存社員は自分の会社が求める人物を把握できます。
日々の業務のモチベーションにもつながるでしょう。
ペルソナの例
ペルソナの具体的な例についていくつか紹介します。
新卒の場合
21歳 男性 大学3年 レストランでのアルバイト経験2年 趣味:登山 長所:粘り強い 短所:スピード感がない 現在は府内の大学に通っているが、就職は三重県内で考えている。実家から通える企業で、自慢の体力を活かして働きたい。休日がしっかりとれる会社に就職して趣味の登山を楽しみたい
中途採用の場合
女性 22歳 独身 大阪府内の大学卒業 大手居酒屋チェーンで1年の社会人経験あり 現場で1年間接客や調理現場を経験 年収:300万円 接客の資格を保有 性格:細かいことによく気づき社交的、初対面の人にも自分から話しかける 趣味:電子のマンガを一気読みすること 今後の目標:接客の力を身に着けてリーダーを目指したい。将来は自分でカフェを出店したい バックグラウンド:大阪府内で働いていたが、地元に帰ってワークライフバランスを大切にしながら働きたいと意識が変わり、Uターンで転職先を探すことにした
ペルソナを設計した後のポイント
ペルソナはいちど設計したらそれで終わりではありません。
設計後のポイントについて解説します。
社員間で共有する
社内でペルソナを共有し続けましょう。
特に経営陣や現場社員など採用に関わる社員は共通のペルソナを持っていなければなりません。
採用活動が終わるまで、社員がペルソナを意識し続けられるよう発信しましょう。
定期的な見直し
一度ペルソナを設計した後も、定期的に見直しましょう。
時代の移り変わりは、これまでに類を見ないほど速くなっています。
数年前に常識だったことが今はそうではなくなったり、その逆もあったりします。
仕事に対する価値観も数年単位で変化します。
社会やトレンドに合わせたペルソナを常に作り続けていきましょう。
「ペルソナを設計したのに、よい人材に巡り会えない」という場合は、ペルソナを設計し直す必要があります。
「ペルソナが自社にとって本当に欲しい人材なのか」
「ペルソナにとって魅力的に映る企業とはどんな企業か。自社はそれを叶えられる企業か」
企業側、ペルソナ側の両側面に立って考えましょう。
あまり細かく設計しない
ペルソナはひとりの人を想定できるくらい細かく設定するしてものですが、採用に関するペルソナはそこまで細かく設定しなくても問題ありません。
たとえ設定したからと言って完全に当てはまる人材を選ぼうとする必要もありません。
前項で紹介したように、ペルソナに優先順位をつけるなどして臨機応変に対応しましょう。
まとめ
今回の記事では、地方企業が採用におけるペルソナを設計することについて解説しました。
以下の9項目に関してくわしく解説しています。
- 地方企業の採用が難しい理由
- ペルソナを設定する必要性
- 採用活動でペルソナを設定するメリット
- ペルソナを設計するための準備
- ペルソナを設計する流れ
- ペルソナを作るときのポイント
- ペルソナの活かし方
- ペルソナの例
- ペルソナを設計した後のポイント
ペルソナを設計することによるメリットは多く、必要な人材を明確にできます。
求人媒体に掲載する内容もブラッシュアップされるでしょう。
企業側にとっても求職者にとってもミスマッチを防ぐことができ、早期離職の防止につながります。
さまざまなメリットをもたらすのが、ペルソナです。
ぜひ、自社にとって必要なペルソナを設計しましょう。