UIJターン採用を考える三重県内企業が求職者を集めるコツを紹介
都市部から地方に移住して働く人が増えてきています。その社会的背景として地方創生や人材の都市部への集中を緩和する取り組み、ワーキングスタイルやライフスタイルの変化などさまざまな理由が考えられます。
一方で、地方企業は慢性的な人手不足にあり、三重県内の企業も例外ではありません。
都市部からの転職を募る方法を模索している企業も多いのではないでしょうか。
都市部から優秀な人材を呼び込むには、企業情報を求職者に広く認知されることが前提となります。
ひとつの媒体だけに求人を載せても認知される可能性は低く、複数の媒体に掲載し、かつ自社のホームページでUIJターン転職に特化したページを設けたりサポート体制を整えたりするなどの企業努力が必要になってきます。
この記事では地元企業がUIJターン転職の希望者に広く認知されよい人材とマッチングするための方法について解説していきます。
UIJターン希望者が増えている社会的背景
ワークスタイルの多様化や新型コロナウイルス感染症の流行、住環境を重視する人の増加、リモートワークの普及など、さまざまな社会的背景から地方に移住を希望する人が増えています。
都市部では高い家賃を払っても狭いマンションにしか住めないけれど、地方に移住すれば広い家に安い価格で住むことができます。
移住を考える人にとって大きなメリットといえます。
家を購入する際にも、安い価格で庭付き一戸建てが叶うとあって、住環境を大切にしたいと考える人が移住を積極的に考えています。
一方で地方側でも「地域活性化に力を入れたい」「優秀な人材を積極的に受け入れたい」と考えており、地方自治体が中心となって都市部からの移住者を受け入れる体制を整えています。
自治体からのさまざまな助成を受けられることも地方への移住を加速させています。
さて、都市部から地方に移住する人の内訳として以下の3つがあります。
都市部で生活していた人が地元に戻って就職や転職をするUターンは耳馴染みがあるでしょう。
UターンのほかにIJターンと呼ばれるものがあります。
それぞれについて解説しましょう。
Uターンとは
Uターンとは、進学や就職を機に都市部へ移り住んだ人が地元に戻るケースです。
車のUターンのように戻ることからUターンといわれています。
Iターンとは
Iターンとは、主に首都圏出身で都市部で生活していた人が地方に移住して仕事をするケースです。
一方向への移動のためIターンといわれています。
Jターンとは
Jターンとは、Uターンほどではなく地元の近隣にある比較的大きな地方都市に移住して仕事をすることをいいます。
地図上ではJを描くような形になることからこう呼ばれるようになりました。
実家では就職先がないため、実家の比較的近くにある地方都市に移住して実家との行き来も可能にしたい人が選択するケースです。
UIJターン転職をする理由
UIJターンで転職を考える人には共通する理由もありますが、それぞれで異なる理由があります。
本項ではそれぞれの理由について解説します。
Uターンの場合
Uターンの場合は「家族の介護が必要になった」「実家の都合で帰ることになった」というような「実家に帰らざるを得ない状況の変化が起きた」という理由が考えられます。
この他「自然豊かな実家がある街でワークライフバランスをとって働きたい」「実家の助けも借りながらゆったり子育てをしたい」といった想いから故郷に戻る決断をする人もいます。
Iターンの場合
Iターンの場合は「都会の通勤ラッシュや人の多さを避けたい」「家賃の安い地方に移住して豊かな生活を送りたい」「自然がたくさんある環境で子育てをしたい」「物価の安い地方で暮らしたい」などといった理由から移住を決断します。
移住先に親戚や知人がいないパターンも多く、移住先企業の情報を得る手段が限定されます。
Jターンの場合
Jターンの場合は「地元の近隣都市に住み、実家と頻繁に行き来できる環境で働きたい」「働く環境もある程度重視し、実家からそう離れていない地方都市で働きたい」といった理由が考えられます。
UターンやIターンに比べると、収入を今まで同様に維持したい、仕事内容を重視したいという気持ちが強いかもしれません。
求職者にとってUIJターンの課題となること
UIJターン転職を考える求職者にとってネックともなる課題があります。
中小企業庁が委託し(株)野村総合研究所が調査した「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2014年12月)によると「UIJターンを伴う転職における課題」として、「賃金収入の低下・不安定化」が32.4%ともっとも高くなっています。
その次に「就職先が見つけづらい」15.3%、「移住に伴う生活基盤の確率」12.4%と続きます。
UIJターンを考えつつも収入や生活に対する不安があることが分かります。
引用:中小企業庁|1 UIJターンを伴う転職の実態
続いて、同様の調査から「UIJターンを伴う転職先を見つける際の課題」についても見てみましょう。
引用:中小企業庁|1 UIJターンを伴う転職の実態
「候補となる転職先の情報がない/集められない」23.7%がもっとも高くなっており、求職者に情報が十分に届いていないことが分かります。
3番目に高い「転職先の労働条件が不明確」8.1%があります。地元企業が一歩踏み出した施策をすることで解決できる課題であることが分かります。
UIJターン採用のメリット
地元の企業にとってUIJターンの人材を採用するメリットはどのようなものが考えられるでしょうか?
本項で詳しく解説します。
離職する可能性が低い
求職者は、「転職する」という決断に加えて「住む土地を変える」という大きな決断をしているので、簡単に辞めてしまう可能性は低くなります。
社員の定着率の低下に悩む企業にとってはよい人材獲得のチャンスといえます。
収入は気にしないケースあり
都市部から移住する理由として「都市部では避けられない通勤ラッシュから逃れたい」「自然豊かな地方で子育てをしたい」「実家のそばで暮らしたい」などがあります。
こういった理由の場合、収入が下がることを覚悟して転職する人がほとんどです。
収入よりも住環境や心の豊かさを求めて移住する人が多いので、安定した給与であれば受け入れられることが多いでしょう。
新しい発想を取り入れられる
都市部では当たり前の発想としてとりいれられていることも、地方の企業ではまだスタンダードになっていないこともあります。
地元の人材しか採用していない場合と比べて、新しいアイデアを企業内部に取り入れ、業務を拡大していく上で大きなメリットになるでしょう。
在職社員にとっても良い意味での刺激となり、社内全体のモチベーションアップを図れるでしょう。
新しい人脈がつくれる
求職者の人脈を通して都市部とのつながりができます。
都市部の企業やビジネスパーソンとのつながりを持ち業務の拡大を図りたい企業にとっては大きなメリットでしょう。
高いスキルを持った人材の確保
都市部の大企業に勤めていて高いスキルを持った人材を獲得できるというメリットがあります。
地方の企業にとって新商品開発のアイデアや組織運営に関するノウハウ、業務の効率化、業界の動向などに対する深い知識を持った人材に入社してもらうことで企業にとってプラスにはたらくでしょう。
UIJターン採用のデメリット
UIJターン採用を実行する場合、地元の人材を採用するケースとは違った採用手法をとる必要や新しい取り組みをする必要があります。
本項では、採用時にネックとなることについて解説します。
人材が集まりにくい
UIJターン向けの求人は多くあります。
したがって、ひとつの媒体に求人を載せても求職者の目にとまる確率は少なく、複数の求人媒体にのせる必要があります。
交通費がネックになる
UIJターン転職を希望する人は、ほとんどの場合、都市部で働きながら移住希望地の企業の面接を受けることになります。
その場合に懸念材料となるのが、交通費です。
往復にかかる時間も必要で休暇を1日とらないと面接に来られないこともあります。
距離によっては面接のために宿泊を伴うこともあります。
こういった懸念を払拭するため、企業側は交通費の支給や最終面接以外はオンラインで行うなどの配慮をしましょう。
UIJターン採用のための方法
UIJターン採用の秘訣は、まず求職者に「知ってもらう」ことです。
知ってもらうための方法について、本項で詳しく解説します。
UIJターン転職セミナーに出展する
人材会社は定期的にUIJターンに特化して転職セミナーや合同説明会を実施しています。
出展企業として参加することで求職者に広く認知することができます。
UIJターンに力を入れている人材会社を活用しましょう。
下記の項目でご紹介している三重県内のサイトの活用を検討しましょう。
リファラル採用の活用
リファラル採用とは、社内外の信頼できる人物を介して採用活動を行う手法のことです。
企業のことをよく理解した従業員の紹介であるため、企業と求職者とのマッチング率が高く採用効率のいい採用方法です。
以下のグラフを見て分かる通り、UIJターン転職での就職手段として3割以上を占めるのが「知人・友人(親族を含む)の紹介」です。
採用側求職者側どちらにとっても信頼できる人を介しているため安心して就職に関する活動を進めることができます。
引用:中小企業庁|1 UIJターンを伴う転職の実態
自治体の活動をチェック
自治体では都市部で働く人向けにUIJターンの会社説明会や移住フェアなどを開催しています。
登録しておくことで求職者に広く認知することができます。
自社HPにUIJターン向けの採用ページを作る
自社HPにUIJターン向けの採用ページを設けることで、都市部からの求職者を積極的に採用しようとしていることをアピールできます。
求職者は多くの求人の中からめぼしい企業を見つけたら、まずはその企業のホームページをチェックします。
UIJターン向けの採用ページがあれば直接応募も可能ですし、何より「UIJターンの人材を積極的に採用しようとしている」という姿勢を求職者にアピールできます。
求職者にとって魅力的な企業になる方法
三重の統計情報を掲載する「みえDataBox」によると令和4年9月中の人口の動きとして県外からの転入者は2,950人です。
このうち転職を伴う転入者とするとさらに少なくなります。
三重県内にUIJターン転職をする人材はまだまだ少なく、優秀な人材を獲得するには企業側の努力が必要になります。
本項では、求職者にとって魅力的な企業になる方法について解説します。
参考:みえDataBox|統計データライブラリ:人口・世帯の動き 令和4年10月1日現在
UIJターンの理由を理解する
Uターン転職の場合は家庭の事情であることが多いものです。
親の介護が必要になり地元に戻ることを決めた人もいます。
仕事に追われる日々よりもプライベートを大切にしてワークライフバランスをとりたいと考える人も多いでしょう。
個人のバックグラウンドを知り理解しましょう。
自社HPを魅力的にする
求職者は転職活動を進める際に企業のホームページをチェックします。
ホームページの充実を図ることで企業としての信頼度をアップすることができます。
地元に住んでいれば肌感覚で理解できる企業のことも都市部に住む求職者に理解することは難しいです。
ホームページが充実していて、企業理念や業務内容、社内風土などが分かればそれだけ企業研究が進みます。
求職者側のミスマッチも防ぐことができます。
入社後に叶うことをアピールする
福利厚生などをアピールして、入社後に叶うことを示しましょう。
例えば家賃補助や介護休暇、育休制度、時短勤務など、移住して働くことに対する不安を軽減してあげるようにしましょう。
転勤がないことをアピールする
UIJターンの求職者にとって優先順位が高い条件は、勤務地です。
「仕事内容よりも優先する」と考える人も多いでしょう。
企業側は求職者がなぜ自社に応募してきているかを考慮し、転勤がないこと、たとえ転勤があっても県内で引っ越しを伴わない程度のものであることをアピールしましょう。
キャリアに応じたポジションを提示する
大都市からUIJターン転職を考える人は、ある程度給与水準が下がることは認識しています。
とはいえ、前職である程度のポジションにいた人は自分のスキルに相応する給料を求めるでしょう。
優秀な人材を確保するためには、本人の持つスキルに匹敵するポジションを提示し、給料面でも考慮することです。
地元の住心地をアピールする
UIJターンするかどうか迷いつつ転職活動をする人もいます。
選考の際に地元の住心地や生活について情報を提供してあげましょう。
求職者の不安感を軽減し、積極的な転職活動を促すことができます。
選考時の負担を軽減する
遠方から選考のために地方に訪れるには交通費もかさみ、ときには宿泊費も伴います。
時間的な負担も相応のものがあります。
求職者の負担を軽減するため、最終面接以外はオンラインで行うなど、求職者の負担を軽減する策を考えましょう。
求人票の選考フローにその旨を記載することで応募数の増加につながります。
引っ越しや住宅のサポートなど
福利厚生が充実していて、引っ越しや家賃サポート、社員寮などの体制が整えられている企業は求職者にとって心強いものです。
自社の福利厚生を見直し新しいサポートを考えてみてはいかがでしょうか。
生活基盤を作る上での情報提供・サポート体制をアピールする
UIJターン求職者向けの採用ホームページや会社パンフレットを通して、移住に必要な情報提供を行うのもよい方法です。
内定者に対しては人事担当者が積極的に情報提供やサポートを行うことで、移住及び転職をスムーズに運ばせることができます。
副業可能であることをアピールする
地方の企業に転職して給与が下がることを懸念する求職者も多くいます。
副業を許可している企業であれば、求人広告に記載するとアピール材料になります。
三重県の取り組み・県内オススメのサイト
三重県ではUIターン就職に関する各種セミナーや合同企業説明会を随時実施しています。
会場に赴く形式の他にオンラインでも参加できるハイブリッド形式で開催しているイベントもあります。
都市部の求職者を募るイベントが多くあるので、そこに出展することで求職者に広く認知することができます。
また、三重県内のサイトでUIJターンを促すサイトもあります。
複数に登録しておくことで三重県内に移住し転職を考える人にアピールしていきましょう。
ミエタイム
三重県の移住サポートや求職者と企業とのマッチングを行っています。
運営は三重県の人材紹介会社「アイゴット」が行っています。
サイト内では三重県の魅力を「食べる」「暮らす」「遊ぶ」「働く」など各カテゴリーごとに発信。
地元で暮らす人はもちろん、県内に移住する人の生活をサポートします。
就職サポートみえ | ホームページ
三重県の企業の発信をサポートしています。
運営は三重県中小企業団体中央会が行っています。
サポート企業への登録は無料です。
採用担当者向けのセミナーも無料で参加できます。
有料の合同企業説明会やWEB企業説明会では出展企業の魅力をアピールしてくれます。
おしごと広場みえ
三重県の企業を「知りたい」「知ってほしい」というニーズに答えるサイトです。
お仕事の魅力発信、三重県で働きたい人と地域の魅力的な企業との出会いを生み出します。
UIターン就職向けイベントの情報、県外から相談できる窓口を設置しています。
みえの仕事マッチングサイト
三重県内外の求職者に県内中小企業の求人情報を届ける、三重県が運営する求人サイトです。
東京圏から三重県へUIターン就職をした人には移住支援金(単身60万円、世帯100万円)を支給します。
登録企業ごとの個別ページで企業情報をふんだんにアピールできます。
求職者のプロフィールを閲覧してスカウト通知を送ることもできます。
求人情報は自動的に大手民間求人サイトにも掲載されます。
まとめ
この記事では、UIJターン採用を考える三重県内企業が求職者を集めるコツについて解説しました。
UIJターン希望者が増えている社会的背景として、働き方の多様化やワークライフバランスに対する考え方の変化があります。
求職者にとってUIJターンの課題となることのひとつに、地元企業の情報があまりないことがあります。
地元企業はUIJターン採用のメリットを知り、求職者に広く認知される対策をとっていくことが必要です。
具体的には地元の自治体を含め人材紹介サービスに登録すること、リファラル採用を考えること、自社ホームページにUIJターン専用ページを設けることなどを実践しましょう。
求職者にとって魅力的な企業になる方法としては、求職者の負担を減らすためのサポートや企業側の配慮、情報提供が考えられます。
今回紹介した県内オススメのサイトに登録し、まずは求職者への認知を図り、よい人材と出会うための手段としましょう。
ミエタイムでは、求職者と地元企業のマッチングを行っています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。